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【動画】ヨガ解剖学の基礎【前編】

安定で快適なポーズのために知っておきたい筋骨格

ヨガのポーズが目指すのは「スティラ(安定)」と「スッカ(快適)」な状態。もちろん、繰り返しのプラクティスが何よりも大切だが、深める過程で解剖学が果たす役割は大きい。

まず前提として、「骨格」は体全体の軸であり、その骨格によってできているのが「関節」。「関節」は骨格に付着した「筋肉」によっては動く。そしてこの「関節」の複合運動が全身運動になる。つまり、「骨格」、「関節」、「筋肉」この三つがチームとなって動きを生み出しているのだ。

解剖学では、どれか一つではなく、この三つが協調し、実用的にきちんと機能しているかを重視し、全体の調和を大事にしている。

ここで言う“実用的”とは、安定していて、安全。そして、エネルギー効率がよく持久的であるということ。つまり、解剖学で目指すところも、ヨガのポーズで目指すところも共通項がたくさんあるというわけだ。

ヨガでは心身の観察を大切にする。だからこそ、三つがバランスよく、実用的に機能しているか、解剖学的視点を持って自身の体を観察したい。

 

動きを生み出す三つの要素

前述した通り、動きは「骨格」、「関節」、「筋肉」三つによって生み出されている。ここでは、それぞれ押さえておきたい基礎知識を紹介。

【骨格】

骨格とは体を支える骨組みで、約206個の大小の骨で作られている(子どもの時は300個以上。癒合してくるため減る)。脊柱を中心に左右対称に存在する。大腿骨のような長い長骨から、手首を構成する小さな短骨など形は多種多様だ。

主軸となる骨格は緩やかなS字状のカーブを描いて体の中心を通る脊柱。約33個の椎骨で構成された、可動域の狭い、小さな関節がつながり、全体としては大きな動きを作るのが特徴。支える重量と必要な動きに応じて椎骨は頭部に向かって小さくなる。

【関節】

骨と骨の連結部分を関節と言う。連結する骨の表面は凹凸の関係になっていて、形状の違いで多様に分類される。ここではヨガで注目すべき関節をピックアップして紹介する。

・球関節
多軸性の関節。関節面が球状をしていて運動域が高い。
代表的な関節:肩関節、股関節

・平面関節
多軸性の関節。平面の関節で可動域は小さく安定性重視。
代表的な関節:脊柱

・車軸(しゃじく)関節
一軸性の関節。軸となる骨を中心に回旋運動をする。
代表的な関節:上・下橈尺(とうしゃく)関節

・蝶番(ちょうばん)関節
一軸性の関節。ドアの蝶番のように一方向に動く。
代表的な関節:膝関節

・車軸蝶番関節
車軸関節と蝶番関節の複合。多くの関節は複数の関節の種類が組み合わさって構成されている。
代表的な関節:肘関節(ちゅうかんせつ)

 

【筋肉】

筋肉は動きを作り出す「動力」。解剖学では筋組織の違いから骨格筋、心筋(心臓を作る筋肉)、平滑筋(内臓を作る筋肉)に分類して考える。ここでは自分の意思でコントロールして体の動きを作る骨格筋にフォーカスする。

骨格筋は骨を支え関節を動かす動力源。いくつもの線維状の筋肉(筋原線維)が束になり、収縮運動を起こすことで力を発揮する。

ヨガでは、関節を守りながら、エネルギー効率の高い体の使い方をするため、表層部にある大きなアウターマッスルだけでなく、体の深層部にある小さなインナーマッスルを重視する。

また筋肉が骨に付着する両端(起始・停止)を知ることで動きを論理的に理解できるようになるので、なんとなくでも付着部位を覚えておくとGood!

構造を知れば動きが見える

今回は、「骨格」、「関節」、「筋肉」の三つに焦点を当てて紹介した。解剖学の学びは、これらを知ることから始まる。

なぜなら構造を知らずして、運動生理学などより実践的で複雑なしくみを理解することは不可能だからだ。

逆に、構造をしっかり知っておけば、応用的な内容でもきちんと自分の中で整理して、納得することができるだろう。そういった学びの積み重ねで、解剖学は本当に自分のものになっていく。

 

山本晴子先生と編集部の解剖学担当ハセ・ヒナコの対談「筋肉の収縮の種類と肩甲骨まわりの筋肉」はこちら。
https://lotus8.co.jp/living-with-yoga/salon/nigate/

 

ヨガの解剖学基礎編【後編】はこちら

【動画】ヨガ解剖学の基礎【後編】

監修=山本晴子
やまもとはるこ。ヨガとリラクゼーションサロン「CoCo Hallelu」主宰。「Studio+Lotus8神戸ヨガ指導者養成講座」講師。神戸市立医療センター西市民病院リハビリテーション技術部にて理学療法士として勤務する傍らヨガを始め、2018年ヨガインストラクターとして独立。